騒想者たち零  

02.踊れピカレスク

original : 夜雀の歌声 ~ Night Bird / もう歌しか聞こえない

circle : 少女理論観測所

追いかけてきた問いかけが今
奏でた歌声遠く響いた葛藤も
置き去りにした虚しさの下
目を逸らしたくなるような現実があっても

踊レ 染み付いた感傷を
叫ベ 醜い浅ましさを
踊レ 錆び付いた感情論
壊セ 巫山戯たトビラの向こうまで

奪われてきた 足掻き続けた
なけなしの矜持すら砕かれた劣等感
逃げ出してきた暗闇の果て
遍く期待・干渉・好奇 振り切れないなら

踊レ 染み付いた感傷を
叫ベ 醜い浅ましさを
踊レ 吹き荒れる狂乱と
叫ベ 全て蹴飛ばしてきた

踊レ 叫ベ

踊レ 錆び付いた感情論
壊セ 巫山戯たトビラの向こうまで

04.暗い偶像

original :神さびた古戦場

circle : 深夜放送

疲弊した心が恥を恐れずに躍る

05.彼岸紀行

original : 彼岸帰航 ~ Riverside View

circle : GIRLSICK

×月◯日
出鱈目なスケッチのような風景、
歩けど歩けど人っ子一人すれ違わない。
真っ白だった一張羅はぼろ雑巾のように煤け、
何処からか吹く風の一つさえ凌げやしない始末だ。

六文銭を持たされると聞いたが、何処にも見当たらない。
思えばそうだ。現代のそれは所詮紙。
葬儀場で燃やされ、灰ばかり残るのが関の山だろう。
先立つ物に頭を抱えつつ、棒になった足に鞭を打つ。

×月△日
ようやっと違う風景に辿り着いた。
川。いつか聞いた賽の河原に違い無い。
仲睦まじく遊ぶ若い親子の姿を見つけた。
笑う子の頬は痩けきっている。一家心中だろうか。

更に見遣れば、違う子供が石を積み上げている。
逆さになった石の氷柱が彼を取り囲んでいた。
時折手を止めその親子を疎ましげに眺めるが、
程無くしてぼくを見つけたようだ。引き攣った顔で逃げていった。

「やい」と呼ぶ声がして、振り向けば赤髪。
色の無いキャンバスに、絵の具が咲く。

赤は物臭に立ち上がり、舟越しに手を差し出した。
嗚呼…南無三、物に聞く渡し賃か。
疲労感しか持ち合わせずばつの悪そうな顔で居たぼくに、
赤はきょとんとした後、何か悟ったように大口で笑った。

身を乗り出し更に伸ばすその手でぼくの腕を掴むと、
忽ち引き摺り込まれ、大きく軋む音。
動転したぼくが何か言う間も無しに赤は竿を取り、
「見ていろ」と言わんばかりにそれを水面に突き刺した。

何者にも成れず亡き者に成ったぼくに、
「悪いようにゃせん」と笑う。
揺れる赤髪に鼻腔を擽られて、
ぼくはついくしゃみをした。

06.梔子と向日葵

original :今昔幻想郷 ~ Flower Land 

circle : Satellite Himawari

曖昧になって/しまったんだ/意味を塞いでいる/ずっと/曖昧になって/しまいたいよ/今以上に/もっと/殺したいね/御伽は梔子に/染まっている/壊したいね/あなたの存在も/欺瞞さえも/殺したいね/向日葵なんて/嘘を/抱えている/壊したいね/わたしの/感情を/   / /ねぇ

07.妖々と

original : 妖々跋扈

circle :鉄腕トカゲ探知機

幽冥の夜が来る
それは虚実の境界が曖昧になったから
暗闇が蔓延る
それは何処かの世界で誰かが攫われたから

夜桜が誘った有象無象の
騒めきを他所に微睡み続け
混沌の世界を愛したとしたら
一体どんな夢を見るのだろう 

ゆらゆらと棚引く春霞の中
何かの蠢く姿を認めて

総て妖した宴の夜に
彷徨い出るは魍魎の国
箱庭で遊ぶ少女の顔で
微笑む瞳に月を映した

花吹雪 浴びれば夢現だった
ぼんやりと佇む その瞬間
ふと気づいたなら心の隙間に
じわりじわり 這い寄る影 一つ

何時の間にやらか一つ二つと
忘れられていく記憶の中で
ふいに懐かしい香りを運ぶ
春風が吹いたら

遥か夢に見た楽園の空
銀色の針が時を刻めば
星屑はさらに輝きを増し
夢想を散らして踊り始める

漸うと白む空
美しく華やかに舞う姿
ひらひらと散る桜
月はそれを静かに照らしていた

2016/5/8

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